心のありよう正す“鏡”に

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心のありよう正す“鏡”に

04月26日号

一般にあまり知られていないが、4月23日は、ユネスコが1995年に採択した「世界 本の日」だ。本の良さを再認識し、親近感を育むことを目的とする。日本でも2001年、この日を「子ども読書の日」と定めて公布している。

海外、特にヨーロッパでは「サン・ジョルディの日」として広く親しまれている。どう猛なドラゴンの生贄に差し出された王女を、伝説の騎士サン・ジョルディが救ったというスペイン・カタルーニャ地方の伝説に由来する。4月23日はサン・ジョルディが殉教した日とされ、世界の文豪セルバンテスとシェークスピアの命日とも重なって、いつしかこの日に、男性が花を、女性が本を互いに贈り合うようになったという。

しかし今年は、ドラゴンならぬ新型コロナウイルスの猛威により、各地で予定されていた関連イベントが中止となったと聞く。知的でロマンあふれる伝統催事が、来年こそ再開されることを祈りたい。

ところで、コロナ禍に端を発する不安な心理ゆえか、国によっては風変わりなものが買い占めの対象になっている。世界で最も多くの感染者が出たアメリカでは、感染爆発当初、治安の乱れを恐れて銃を買い求める一般人が専門店に殺到したというが、最近ではヒヨコの“爆買い”が起きているらしい。栄養豊富な鶏卵を食料として確保しようとする心理の現れという説もあるが、真偽のほどは不明だ。

「ニューヨークタイムズ」紙によると、「ヒヨコたちは食料確保以外の観点でも、人に安心を提供している。ヒヨコが育つのを見ていると、希望が満ちてくるからだろう」と分析している。つまり、弱きものを愛で、守ってやりたいという心理が働いているというのだ。庇護したい欲求は、その実、自らの孤独が癒やされたいという気持ちの裏返しでもあるのだろう。

日本の場合、米国の銃やヒヨコ騒動に相当するのはマスクやトイレットペーパーの例だが、最近では書籍の売れ行きも好調だ。特に休校中の子供向けの本、児童書や学習参考書などの売り上げが伸びている。会社の休業前に、日ごろ読みたいと思っていた本を買ったサラリーマンも少なくないという。本に描かれた世界に、拠り所や癒やしを求める心理も働いているようだ。

そもそも本には“読む薬”として驚くべき効果があると、精神科医の五十嵐良雄氏は説く。「本はひとりで読むものだが、世間とのコミュニケーションをとる行為でもある。本を読むと普段は表に出さない感情と向き合うが、同時に、自分もさらけ出される。現実から逃げ込める場所にもなるし、安らぎの源泉にもなる」として、科学的な裏づけによる「うつ予防」「ストレス軽減」「快眠」「幸福度アップ」などの効能を挙げる。

ある実験では、9人のカウンセラーとともに、10番目のカウンセラーとして「本」を用意した。カウンセリングによるクライアント(来談者)の精神状態の変化を追跡したところ、共感力の高いカウンセラーには及ばなかったものの、共感力の低いカウンセラーよりも「本」のほうが、9カ月後のクライアントの症状や経過が良好だった。つまり一人で読書するだけで、相当な療法効果が期待できるというのだ(第9回 日本読書療法学会勉強会「依存症と読書療法」資料)。

ちなみに同学会は、読書によって問題が解決されたり、なんらかの癒やしが得られたりすることを、広く「読書療法」と認定している。

このところ、あらゆるマスコミ報道はコロナ問題に終始している。それはそれで必要な情報ではあるが、根拠のない怪しい言説やフェイクニュースによって要らぬ恐怖心に囚われたり、先行きへの不安感が過剰に募ったりして、「コロナうつ」と呼ばれる諸症状に苦しむ人も少なくないだろう。やむを得ない感染防止対策とはいえ、自宅待機生活が長期化するにつれて、世界中でDV(ドメスティック・バイオレンス)、すなわち家庭内暴力が急増中とも報じられている。乱れがちな心に平静さを取り戻すひと時を、いま意識的に持つ必要があるのではないか。

その心の良薬こそ、一人でできる読書だろう。私たちお道のようぼくには、ものの見方や考え方、信仰生活のかどめとなる確かな教えがある。そして、原典はもとより、教えの基本を記す解説書や教理書は多い。自らの心を映し出し、その姿を顧みて、心のありようを正す“鏡”ともなる「お道の本」にふれて深く味わう機会を、いま、積極的に持ちたいものである。(ま)

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