〝当たり前の生活〟という家庭教育

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〝当たり前の生活〟という家庭教育

09月13日号

新型コロナウイルス禍により「新しい日常」が掲げられ、生活様式や行動形態、働き方などに変化がもたらされている。その一つに、在宅勤務や外出自粛によって、家族が共に家で過ごす時間が増えたことがある。子供のストレスやDV被害などの側面から取り上げる報道もあったが、親子の時間の大切さを見直す機会になったという声が多い。教育といえば、学校や塾任せの現状もあるが、子供と過ごす時間が増え、あらためて「家庭教育」について考えた親も少なくないのではないか。

文部科学省は「家庭教育は、すべての教育の出発点」と謳っており、「家族のふれ合いを通して、子供が、基本的な生活習慣や生活能力、人に対する信頼感、豊かな情操、他人に対する思いやり、基本的倫理観、自尊心や自立心、社会的なマナーなどを身につけていくうえで重要な役割を果たす」としている。そのために「いつも家族であいさつを習慣にしている。早寝早起きを心がけている。朝ごはんは家族一緒に食べる。学校での出来事などについて、子供とよく話をする」ことを各家庭へ呼びかけている。

家庭は子供に直接的な影響を与える環境である。それゆえに、家庭教育やしつけは親の重大なつとめだ。しかし、子供が健全に育つ家庭環境を考えると、昨今は乳児の置き去り、虐待、子供を放置するネグレクトなどが要因となる事件が絶えない。いまや子供を取り巻く家庭環境は、決して良好とはいえないだろう。

その背景には、社会構造が変わり、家族のありようも変化し、価値観の多様化や倫理観の希薄化により、子供にどう教育すればよいのか、何をしつけるべきか分からない親が増え、家庭の教育力が低下したことがあるという。核家族化により、夫婦だけで子育てをしている家庭では、親が出産と同時に子育てに直面する。マニュアル本やインターネット情報に頼るが、子供の反応はマニュアル通りにならず、どうすればいいか迷い、自信を無くす例は多いだろう。その焦りや苛立ちが虐待に結びつくケースもある。

過日、某更生施設(少年院)を慰問した際、院長の言葉に考えさせられた。その施設は14歳から20歳未満の非行少女を収容する。驚くことに、特に必要と認める場合は概ね12歳から受け入れる。『子供・若者白書』(令和元年版)によると、先の年齢層で罪を犯すのは16歳が最も高い。院長いわく、親や社会へ激しく反抗する子は減り、ここ数年は、一見良い子だが、すぐにキレる子が増えた。また親から虐待を受けた子も多い。その子たちは人を信用しない。指導員が長い時間をかけてコミュニケーションを図っても、何げないひと言に傷つき、心を閉ざす。自己肯定感が低く、「私なんか生きていても……」と将来への希望を持てない子が少数ではないという。

子供たちが犯罪に走る背景には〝家庭機能不全〟があると院長は分析する。では、どんな矯正教育をするのか尋ねると、「科学的なプログラムも大事だが、まず愛情をもっての『しつけ直し』です」と言った。日課は7時起床に始まり、掃除、朝食、学習授業、夕方はニュースを見て、日記を書いて、21時就寝。一般家庭に見られる当たり前の生活だが、彼女たちにとっては、毎日掃除する、朝起きたら「おはよう」、何かしてもらえば「ありがとう」と言う、といった基本的な生活習慣や礼儀を身に付けさせることが第一であり、実際それで自信を取り戻し、将来の夢を語るほど立ち直る子もいるという。

現在の家庭教育のあり方を考えることは、子供の未来につながる。いかなる時代にあっても、子供たちの未来は輝かしいものであってほしい。だからこそ、確かな拠り所が求められる時代なのだろう。

親神様の教えに照らした、お道の家族観に基づく教育やしつけは大切である。「もう道というは、小さい時から心写さにゃならん。そこえ/\年取れてからどうもならん。世上へ心写し世上からどう渡りたら、この道付き難くい」(おさしづ明治33年11月16日)
〝陽気ぐらしを目指す人に育てたい〟との親の思いのもとに、子供たちにしっかりと向き合う家庭教育が、いま求められている。

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