真冬は根に伏せ込む旬

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真冬は根に伏せ込む旬

01月31日号

真冬は根に伏せ込む旬

昨年は新型コロナウイルスに翻弄された一年だった。それだけに、新年は「節から芽が出る」年でありたいと願っている。
しかしながら、年始からコロナの感染が再拡大。続く11都府県への「緊急事態宣言」。じっと我慢の苦しい日々に、ストレスを溜め込んでいる人も多いのではないか。
東日本大震災後から福島県民の健康調査を続けてきた福島県立医科大学教授の大平哲也氏は、著書『感情を〝毒〟にしないコツ』の中で調査結果を明らかにしている。それによると、震災後の放射線に対する不安や避難生活によるストレスや怒りといった「負の感情」は、うつなどの心の病気だけでなく、高血圧や糖尿病といった生活習慣病を引き起こす要因になっていると指摘。そのうえで、新型コロナウイルスの影響で不安やストレスを感じたり、感染予防のために外出を控えたりする今日の状況は、福島の状況と酷似しているとして、長期化する「ウィズ・コロナ」の生活に注意を促している。
大平氏は、「負の感情」に振り回されず心と体の健康を保つには〝ガス抜き〟が必要で、そのポイントとして①趣味を持っていること ②怒り以外の感情(笑いなど)で発散すること ③話を聞いてくれる人がいること(周囲のサポート)  の三つを挙げている。要は、制限される生活環境の中で、いかに気分転換を心がけるかが、コロナ禍の中で心身ともに健康に暮らす鍵となるのだろう。
ところで、趣味や笑いやおしゃべりもいいが、「先の楽しみを持つ」というのも気分転換になるのではないか。その一つとして、これからの季節、植物の成長に目を向けてみることをお勧めしたい。
本紙が読者の手元に届くころ、2月3日に二十四節気の「立春」を迎える。そして2月18日から「雨水」。これは、寒さが次第にゆるんで、雪が雨へと変わり、凍っていたものが解けて水になるという意味だ。地域差はあるが、この時季から草木が芽生え、少しずつ春の気配が感じられるようになる。
早いところでは、フキノトウが地表に顔を出す。最近はスーパーでも出回るので、独特の苦みに早春を感じたい。
親里では梅が咲き始める。次いで早咲きのアタミザクラ、シダレザクラ、ソメイヨシノの順に次々と花が咲く。そして花後は、新緑が一斉に芽吹き、目にも鮮やかだ。
先行きの見えないコロナの感染状況とは違い、四季は必ず移り変わる。自然界に満ち満ちる春のエネルギーを五感で味わい、心に取り込めば、コロナ禍によって抱えた「負の感情」も、少しは解消されるのではないか。
とはいえ、2月初旬はまだ寒く、活動しにくい時季だ。しかし、こんなときだからこそ、しておくべきことがある。
たとえば園芸家は、この時季「寒肥」に忙しい。寒肥とは、12月から2月までの植物が休眠状態に入っている時季に与える肥のことで、有機肥料が良いとされる。寒肥は、ゆっくりと土中に馴染み、やがて植物の新芽が吹くころに、根が養分を吸収して枝へ行き渡らせるのである。
真冬の時季に土中に肥を伏せ込み、次の成長に必要な力を根に蓄えるからこそ、新しい芽吹きと将来の開花が実現するのだ。
コロナの感染再拡大によって、再び耐え忍ぶ生活が続いている。教内でも、いまだ思うように活動できないことに、忸怩たる思いを募らせる人も少なくないだろう。動きを止められているいまの状況は、寒さをじっと凌ぐ真冬の時季と、どこか重なって見える。
冬が過ぎれば、鮮やかに「節から芽が出る」ことを楽しみにして、いまは根にしっかりと伏せ込む旬だと心得、前向きに努めていきたい。

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