隠喩としてのマスク-宗教から見た世界-

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隠喩としてのマスク-宗教から見た世界-

10月25日号

今月はじめ、米国のトランプ大統領が新型コロナウイルスに感染し、3日という異例の早さで退院した。大統領専用ヘリを使ったホワイトハウスへの「帰還」のセレモニーでは、一人バルコニーに立ち、マスクを外す様子をいささか大仰に演出することで、〝コロナを克服した〟自らの姿を、国民に強く印象づけようとした。
医学的な指針とは異なり、「強いアメリカ」の体現者でありたいトランプ氏にとって、このコロナ禍でマスクの着用にこだわることは、「弱さ」の証し以外の何ものでもない。実際、トランプ氏の集会では、多くの支持者はマスクを着用していない。また、自身のコロナ感染が発覚する数日前に行われた大統領候補討論会では、トランプ氏は対抗馬のバイデン候補に対し、「彼はいつもマスクをしている」と嘲る態度を見せていた。
4年前の大統領選からトランプ氏が唱え続けてきたモットーは、「強いアメリカを取り戻す」である。この「強さ」が、実は多分に「戦闘的」(militaristic)なニュアンスを含んでいることは、日本人にはなかなか理解しにくい。「ブラック・ライブズ・マター」のデモを暴力的に威嚇する白人至上主義者も、トランプ氏が持つこのミリタリスティックな政治姿勢に強く共感している。
さらに不可解なのは、こうしたトランプ氏の政治手法が、全米の約25㌫を占めるといわれるキリスト教「福音派」からも強く支持されてきたという事実である。コロナ禍に至り、福音派のトランプ支持にも陰りが見え始めているものの、最近のトランプ氏はそうした動向を見据えたうえで、福音派の支持回復を狙った言動を繰り返している。今回、彼が人工妊娠中絶に否定的なカトリックの信仰を持つエイミー・コーニー・バレット氏を最高裁判事に推薦したのも、まさにその理由からである。
もちろん、キリスト教福音派イコール白人至上主義者というわけではない。だが、この二つのグループは、自らが信奉する価値が脅かされつつあるという深刻な危機感を共有している。あえてマスクを着けないという  トランプ氏にとっては  「強さ」を暗示するはずの姿は、実は白人至上主義者やキリスト教福音派の危機意識の裏返しとも言えるものなのである。

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