天理時報で新しく始まった4コマ漫画は、実話を元にしています。ここでは、そのオリジナルストーリーをお届けします。
立教184年(2021年)8月1日号掲載分
雨の日のこと
その朝、勉の体温は三十七度五分。昨日も一昨日も、傘は持っていても強い雨風で、びしょぬれで帰宅した。今日もまた、雨である。迎えに行くからと、学校まで車で送っていった。ところが、下校時間になって電話しても家族が皆留守だったようで、三日目もまた雨の中、勉は歩いて帰宅することとなった。
私達が帰って来ると、頭からズブぬれになったらしい勉の制服が洗濯カゴの中にある。
「どうしてこんなにビショビショかしら。傘もあったのに……」
ボソボソと呟く私に、五年生の弟がその訳を教えてくれた。
校門を出て間もなく、小学生がズブぬれで歩いていたそうである。傘は持っているのに壊れていてさせない。それで、その子に自分の傘を貸して、四十分以上かかる道のりを、そのまま歩いて帰って来たという。
マスコミでは目を覆いたくなるような中学生の犯罪が、朝に夕に報じられている昨今である。
「もう、成績のことなんて言うまいやあ。これだけで十分やないか」
「そうねえ」
主人も私も胸が熱くなり、心の底から喜ばずにはいられなかった。その朝七度五分だった体温は、高くなるどころか、すっかり治まっていた。
(真武眞智子 教会長夫人 四十五歳 福岡県)