こみち
ようせつ
前号から始まった新企画「本の径路」。今回のテーマは夭折の童謡詩人、
なか え ゆ り
金子みすゞと決まった。執筆を担当される女優の中江有里さんが山口を訪
れたのは、秋の行楽シーズンに入ったばかりの9月中旬であったが、ちょうど大型の台風18
号の接近と日程が重なり、天気予報とにらめっこをしながらの取材となった。しかし、心配
まぬか
された台風の直撃は免れ、なんとか二泊三日の取材を終えることができた。
しものせき
初日は、みすゞが20歳から命を絶った26歳までの人生を過ごした下関市での取材。みすゞ
自身が暮らした町並みは、大正時代から大きく様変わりしているが、当時の面影を遺す建物
も保存されていて、そこにみすゞの足跡を訪ねる。
なが と せんざき
たたず
二日目はJR山陰本線で生地の長門市仙崎に向かう。そこは昔ながらの佇まいを残す静か
かね こ ぶんえいどう
な山陰の漁港である。みすゞが幼少期を過ごした金子文英堂跡地に置かれた「金子みすゞ記
まわ
たど
念館」から、本人の墓所を廻り、みすゞの鋭敏な感性を磨いたであろう潮の香りを辿った。
にぎ から と
ほういち
あか
最終日はまた下関に戻り、観光客で賑わう唐戸市場や、「耳なし芳一」の舞台となった赤
ま
しゅんぱんろう
間神宮、日清戦争の講和会議が開かれた春帆楼などの史跡を廻り取材終了。中江さんはそ
きゅう
のまま空路で東京に戻られる予定であったが、台風の影響で飛行機が飛ばない。それで急
きょ
遽新幹線に切りかえるが、それもその時点では新大阪までの限定運行。結果、無事東京まで
帰っていただくことができ、スタッフ一同胸をなで下ろした。
移動距離も長く、とてもハードなスケジュールだったが、中江さんが終始穏やかな笑顔と
まと
幅広い話題で和ませてくださったおかげで取材クルーも一つに纏まり、楽しい充実した取材
旅行となった。
(弘)
編 集 後 記
Vol
.2
平成25年(2013年)12月1日発行
編集人
永尾教昭
発行所
天理教道友社
632‐8686 奈良県天理市三島町271
電話0743(62)538 振替090‐7‐10367
印刷所
天理時報社
632‐083 奈良県天理市稲葉町80
……試行錯誤している無駄な時間が大事
なんです。うちの修業は10年と言ってい
ますが、たとえばその半分の5年くらい
た
経って、やっと一つのことに気づいたと
しても遅くはありません。一つ開くと、
そこから十も百もバーンと一気に開くん
です。それから先の伸びはすごいですよ。
〈表紙=特集・小川三夫から〉
Tenrikyo Doyusha
2013
ISBN978-4-8073-0580-3
定価は表紙に表示
http://doyusha.jp