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書評・感想

挿話と図版で見る『源氏物語』の芸能

近江昌司 天理参考館顧問

プロフィール

【おうみ・しょうじ】1933年、奈良県生まれ。國學院大学大学院日本史専攻修士課程修了。56年、天理大学附属天理参考館勤務。90年、副館長、天理大学教授。この間、千葉大学、大阪工業大学他の非常勤講師、国立民族学博物館共同研究員などを務める。現在、天理参考館顧問、天理大学名誉教授。著書に『日本古代史の問題点』(学生社)など。

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雅楽が大成し、最も盛行したのは王朝時代。当然、この時代に執筆された『源氏物語』には、たくさんの雅楽が登場する。
これまで私たちは、碩学・山田孝雄博士の名著『源氏物語の音楽』を通して『源氏物語』の芸能を理解してきた。ただそれらは、どのような手振り・旋律・拍子で、いかに絢爛豪華で幻影的な舞台だったのか、という点では、現行の演者・演出者・経験者に及くものはない。そうした渇望を満たすものとして、本書が刊行された。

 

第一章「源氏物語と雅楽」では、さまざまな曲の要を得た解説が、実際の音楽や舞う姿、貴公子らの鑑賞ぶりや舞台の雰囲気を彷彿させる。また、光源氏や頭中将、そして平安貴族の多くが、教養として雅楽を歌い舞う背景が美しく語られている。さらには『源氏物語』における雅楽の位置づけにまで及ぶのだから驚きである。

 

第二章「雅楽物語」は、雅楽の名器・名人のお話。これがまた、楽しい読み物になっている。アジア諸国の芸能が、わが国の古典雅楽として完成していく過程を、各楽器や演者の逸話などを通して、興味深く読むことができる。

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