呼吸困難に陥り絶望の淵に 全土の教会でお願いづとめ

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呼吸困難に陥り絶望の淵に 全土の教会でお願いづとめ

07月05日号

ブラジルのムラカミ・アウベルト・ユウジさん

 ブラジル・サンパウロで暮らすユウジは3月中旬、新型コロナウイルスに感染した。入院患者の中で最も重篤となり、呼吸困難の状態に陥った。「もう楽にしてくれ……」。家族や教友と面会できず、死と隣り合わせの絶望の淵に立ったとき、ブラジル全土の教会でお願いづとめが勤められた。以後、ユウジは驚異的な回復を見せ、53日間に及ぶ入院生活を経て、奇跡的なご守護を頂いた  。直接顔を合わせてのおたすけが叶わない厳しい状況下で、親神様に心を結び、心一つに祈った伯国の教友たちの信仰実話を紹介する。

(文中、敬称略)

「新型コロナ」重症から奇跡の回復

1千200万人が暮らす、南半球最大の都市サンパウロ。市内にあるプロミッソン教会(邨上健治ルイス会長)から4キロ離れたマンションに住むユウジは、妻のエウニセ・ミチヱ(61歳・同)、息子のエドアルド・ユキオ(28歳・同)、娘のヴァネッサ・チエミ(25歳・同)の4人で暮らしている。

同教会で生まれ、銀行に就職したのち、ブラジル伝道庁主催の「教義講習会」と「ブラジル修養会」を受講。32年前に初のおぢば帰りが叶い、おさづけの理を拝戴した。

その後、ミチヱと結婚。ミチヱもようぼくの仲間入りを果たし、所属教会の月次祭の炊事ひのきしんに勤しむようになった。

二人の子供も数年前、ようぼくに。それぞれ忙しい生活を送りながらも、月次祭には全員で参拝し、教祖130年祭にも帰参するなど、家族ぐるみで道を求めてきた。

患者の中で最も重篤

仕事の傍ら、地域のグループ「たのもし会」に所属してきたユウジ。メンバーと模擬店を催して資金を集め、地域の老人ホームを支援してきた。2年前に定年退職してからは、人だすけの心を胸に、支援活動に一層励むことを心に決めていた。

そんななか、ユウジの体に異変が起こる。

3月13日、講社祭のために兄の健治会長(71歳)が訪ねたところ、ユウジは力なくこう話した。

「体がだるくて熱っぽい。友人と食事をしたときに風邪がうつったのかもしれない」
以後、症状は悪化の一途をたどり、息苦しさは増す一方だった。
「ただの風邪ではないかもしれない…」

折しも、ブラジルで新型コロナウイルスの感染が広がり始めていた(コラム参照)。〝未知の病〟に感染したかもしれない…。恐怖に脅えながら受診。検査の結果、陽性反応が出て即入院となり、家族との面会さえ叶わなくなった。

その後、さらに症状が悪化し、入院患者の中で最も重篤に。やがて意識を失い、致命的とされる昏睡状態に陥った。

「ここは、どこだ……」
1週間後、ユウジは意識を取り戻す。しかし錯乱状態が続き、幻覚に襲われた。自力呼吸が困難となり、気管を切開し、管を通して酸素吸入をせざるを得なくなった。

鼻と口を同時に塞がれているような息苦しさが24時間続く。深く息を吸いたくても吸えない状態がつらく、思わず「もう楽にしてくれ……」と三度も医師に告げた。

最愛の家族と顔も合わせられず、生きる希望を失いかけた。ユウジは、死と隣り合わせの絶望の淵に立っていた。

心一つにお願いづとめ

ユウジが入院したころ、サンパウロでは生活に必要不可欠な商業・サービス以外の施設が閉鎖された。

社会生活への影響が出始めた中でのユウジの感染。妻のミチヱは、ユキオとチエミと共に感染の恐怖を感じながらも夫の身を案じた。自宅待機命令が出され、見舞いに行けないだけでなく、教会に参拝することさえできなかった。

〝つながり〟が断たれた状況で、ミチヱは「あのときの心細さは、言葉では言い表せない」と振り返る。

それでも3人は、ユウジのたすかりを願って自宅でお願いづとめを続けた。

さらにユキオとチエミは、父の病状についてSNSに投稿した。事情を知った教友たちが「大丈夫」「神様にたすかりを祈っている」と温かい言葉をかけてくれた。

ユキオとチエミは「皆さんに励まされたおかげで、心倒さず、前を向くことができた」と述懐する。

一方、健治会長は、ユウジのたすかりを願って連日お願いづとめを勤めた。

また、ユウジの深刻な病状を知った村田雄治・ブラジル伝道庁長(75歳)も「ユウジさんには代を重ねた信仰がある。必ずご守護いただける」と、伝道庁でもお願いづとめが行われた。

さらに、ユウジの友人である大竹エヅアルド芳伸・バウルー教会長(64歳)の発案により、管内の多くの教会長がこぞってお願いづとめを勤めることに。大竹会長は「SNSでつながるブラジル国内の教会長にお願いづとめを呼びかけ、一心にたすかりを願った」と話す。

ユウジの病床へおたすけに駆けつけられないもどかしさはあったが、ブラジルの教友たちは、離れていても心一つに祈った。

53日間の入院を経て

入院時、肺や腎臓などの機能がまひしていたという。医師は生命の危機を感じていたが、ブラジル全土の教会でお願いづとめが勤められて以後、回復の兆しが見え始める。

例えようもない息苦しさが少しずつ和らいでいくことをユウジは実感していた。お願いづとめが勤められたことは知らなかったが、「この体は親神様からお借りしているもの。たすかるためには、親神様にもたれるしかない」と直感した。

やがて、家族とスマートフォンで連絡が取れるようになり、ブラジル全土の教会でお願いづとめが勤められたことを知った。教友の真実と、親神様のお働きで回復していることを確信すると、さらに奇跡的な回復ぶりを見せ、入院から53日後の5月14日、多くの医療スタッフに拍手で送り出されながら退院した。

自宅に戻ったユウジは、ブラジル全土の教会長に向け、SNSで感謝のメッセージを送った。

「皆さんがお願いづとめを勤めてくれてから、医療スタッフが驚くほど、私の体は快方へ向かったのです。お願いづとめがなかったら、決して回復することはなかったと確信しています。本当にありがとうございました」

ユウジの退院を知った村田庁長は激励の言葉を送った。「大節を成人の旬と捉え、今後は健治会長の片腕としてお道のうえに活躍してくれることを期待している」

現在、ユウジは軽い貧血や筋肉の衰えがあるものの、元気にリハビリに励んでいる。

ユウジは言う。
「親神様のご守護なくして、病気に打ち勝つことはできなかった。このご恩に報いるために、もっと深く教えを求め、次におぢば帰りを果たしたときは、妻と一緒に教人資格講習会を受けたい」
(文=西太一郎)

ブラジル国内での感染状況

2月25日、ブラジルで初めて新型コロナウイルスの感染者が報告された。

3月11日、WHO(世界保健機関)は「パンデミック」を宣言。13日、事態を重く見たブラジル保険省は、地方自治体にに大規模イベントの中止を要請。海外からの旅行者には1週間の自主隔離を呼びかけた。

ところが、ブラジル政府は経済を優先すべきとして、感染対策を各州と市へ委ねた。その後、感染者が増え続け、6月19日には累計感染者がアメリカに次いで100万人を突破。世界の中でも、感染拡大の深刻さが際立っている。

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