今がある有り難さ-幸せへの四重奏-

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今がある有り難さ-幸せへの四重奏-

12月06日号

激動の2020年もあと1カ月。現在、アメリカの新型コロナウイルス感染者は1千260万人で、26万人が亡くなられた。今日、家族が元気でいられるのが奇跡に思える。
今年はベートーベンの生誕250年。しかし、世界中で予定されていた彼を讃えるコンサートはほとんど中止、音楽家たちは毎日食べるのがやっとの生活を強いられている。

一方、音楽院の講義で学生たちと偉大な作曲家の足跡を辿るのには、ぴったりの年だったとも言える。ベートーベンは貧しい生活のなか、聴力を失いながらも、頭に聞こえる音を描き続けた。だからこそ彼の作品は、奥深い信念のこもったものばかりだ。
学生たちと作品について語り合うたびに、若い彼らの心に灯る〝音楽家の炎〟を感じる。いずれは、これらの作品の偉大さを未来へ伝えてくれるに違いない。
音楽家は、個性あふれる曲者ぞろい。でも、その背後に目をやると、個性を自由に伸ばしてくれた親や指導者に恵まれたケースが多いように感じる。

かく言う私も、小さいころから〝変わっている子〟だった。天理小学校1、2年生のとき、担任はベテランの南堀先生。私が家の前を通る電車の光景を詩にしたとき、夜通し月食の観察をした研究ノートを見せたとき、菊の花の絵を放課後まで描き続けたとき、先生は私の〝変わっているところ〟をいっぱい褒めてくださった。天理高校では、担任の中森先生が、いつも朝寝坊して慌てて本部神殿まで走ってくる私の出席をつけるのを、列の最後で辛抱強く待ってくださった。そしてアメリカに留学する際には、一番に応援してくださった。

また、天理教音楽研究会の演奏会の後、岩谷雄太郎先生は「舞ちゃんは四角いところに丸を描く。隙間まできっちりと弾いていないかもしれないけれど、それが面白いんだよね」と褒めてくださり、バイオリンの恩師である岩谷悠子先生は、あまりにも練習してこない私を叱りながらも、〝自由さ〟を許してくださった。私が「この曲大好きなんです」と言ったとき、「じゃあ、やってごらん」と返してくださった先生の笑顔を鮮明に覚えている。

両親は、神様から与えられた子供の才能を見いだし、伸ばしてやるのが親の役目だと信じ、私たち三姉妹を育ててくれた。私が幼いころ、遠くで鳴る電車の音と同じ音階を声に出すのを聞き、この子は耳がいいから音楽をやらせようと思ってくれていなかったら、今日の私はない。
明日はどうなるか分からないこの状況で、確実なのは今があること。そして私の今があるのは、ひとえに両親や恩師のおかげである。
追伸 12月1日は父の80歳の誕生日。お父さん、お誕生日おめでとう。

天理時報2020年12月6日号掲載

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