〝新しい生活様式〟への試み

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〝新しい生活様式〟への試み

08月02日号

以前、とてもエネルギッシュな教内の先生がおられた。先生は「一生のうち毎日24時間ある中で、7時間も8時間も寝て時間を無駄にするのは申し訳ないと思う。3時間か4時間の睡眠を取れば、次の一日は持つ。そんなふうに考えて実践している。それで身上壮健は維持できる。親神様は、そういうことに耐えられる身体を造ってくださっている」と豪語された。寸暇を惜しんで御用に働く姿勢に、鬼気迫るものを感じて、とてもまねできないと思ったが、いまにして振り返ると、先生は御用と御用の間の移動中などに車の中で午睡をたびたび取っておられたことに気づく。

OECD(経済協力開発機構)の統計によると、一日の平均睡眠時間は日本人が世界で最も短く、約7・4時間。韓国は7・9時間、スウェーデンは8・1時間、メキシコは8・3時間、南アフリカは9・2時間に上り、世界平均と比較すると、日本人はとにかく睡眠時間が短いという。

海外では古くから、スペインや中南米諸国に「シエスタ」と呼ばれる昼寝の文化がある。さらに近年、パリ、ロンドン、ブリュッセルなどでは「昼寝バー」と呼ばれるサービスが広がり、仕事の合間などに手軽に昼寝ができるそうだ。

現代社会では、仕事に追われて過度なストレスを感じる人が増えている。そのうえ、コロナ禍の影響で〝新しい生活様式〟への変化を迫られるなど、日本人は、十分な睡眠を取れない生活から、まだまだ抜け出せないのではないかと危惧する。

一方で、昼寝に代表されるように、一日の中でわずかな休憩をしっかりと取る習慣を身に付けることについて、あらためて考える機会を得ているようにも感じる。

昔の日本では、農家は雑節でいう「半夏生」から昼寝を解禁したという。半夏生は現在の7月2日ごろで、田植えが済み、梅雨が明けかけて気温が高まる時節だ。その後、特に近畿地方では、収穫に向けて忙しくなる時期になると昼寝を返上し、農事に勤しむための仕切りも設けたと聞く。

農事は、基本的に太陽が昇っている間の作業なので、夏は朝早くから動きだし、労働時間も長時間になる。そのため昼寝をすることで、緩急をつけて働くことは道理にかなった習慣だといえよう。午睡は、農事に持続性を持たせるための知恵だったのだ。

ところで、「おさしづ」に「暇の時心鎮めてたんのうの心持たねばいかん。まよば暇や。暇なら悠っくりせにゃならん。そうせにゃ立ち行く処があろうまい。こんな日は一寸暇という。悠っくり休まにゃならん」(明治24年6月8日)とある。

御用や仕事のうえで、緩急をつける大切さを教えられているように感じるお言葉だが、その続きでは、いざ御用となれば詰めてつとめることも大事と諭されている。

「今一時の処三人暫くという。暇どころやない。それに日々に詰めて一日二日は悠っくりと、気の養い無ければいかん。内から行たらこういう事に運んで来たら、こっちから連れて力入れて講という」(同)

休むのも、しっかりと働くのも、力を入れるポイントを見極めることが必要であろう。

「おさしづ」では、さらに、「この道は大きい心持っては大きい道に成る。小さい事に思うてはならん。小さい心持って居てはあちらからにをい、こちらからにをい、一つの邪魔になる」(同)と教えられる。

大きな心を持ってつとめる。仕事と休みは二つ一つであり、そのバランスを維持することが、肝心なときの働きの質を上げることにつながるだろう。

昼寝といわずとも、正味の働きをするためにバランス良く休みを取る意識を持つことは大切だ。生活様式や社会活動を見直すこのタイミングで、ようぼくとしての信仰生活のあり方を見直すことも大切である。高齢者や社会的弱者はもとより、人知れず悩みを抱える周囲の人たちへの心配りを忘れず、大きな心を持って、一人ひとりが力を出しきるつとめ方を目指したい。

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