心を通わせる「会話」考

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心を通わせる「会話」考

05月03日号

現在、密閉、密集、密接の「3密」を避けるよう呼びかけられている。言うまでもなく、新型コロナウイルスの感染拡大、集団発生を防止するための取り組みである。

直接会ってのコミュニケーションが図りにくい現状にあって、会話や対話のあり方について考えてみたい。

会話や対話には、さまざまなタイプがある。

その一つに、事実確認のための会話がある。なぜ、そう対応したのかなど、相手の言動を確認していくことに終始するものだ。このタイプは、相手を誹謗中傷や批判する形に陥りやすく、対立構造になりがちである。

もう一つは、ビジネスシーンによく見られるタイプで、相手に自己アピールするものだ。自分あるいは自分に属する物やサービスがいかに便利で素晴らしく、相手にとって利することが多いと納得してもらおうとする会話であり、その方向性がはっきりしている。一方、相手に配慮する視点に欠けるきらいがある。

では、前述の二つとは異なり、一方通行に陥らない会話・対話とは、どのようなものだろうか。それはコミュニケーションが緊密に行われ、和気あいあいとした雰囲気が醸し出されるものであろう。

いま、私たちが目指すべきは、このような“心を通わせる会話”であると思う。

たとえば、夫婦の会話を想定してみる。夫が仕事から家へ帰ると、妻が新しいスカートを試着していた。夫が「(無断で)いつ買ったの?」と無愛想に尋ねると、妻は夫のほうを見ようともせずに「(相談するほどの値段ではなかったので)期間限定で安かった」と答えた――。

この例は、先ほどの会話のタイプでいうと、一番目の事実確認のそれだろう。夫の批判めいた意図を察知した妻が上手にはぐらかす。大げんかにはならないが、ギスギスした空気が漂う。どこの家庭にもあり得るシチュエーションだろう。

同じたとえで、二番目のタイプを想定すると、妻が無断でスカートを買ったことが気に食わない夫が、あれこれと理由をつけて返品させようとする――などとなり、さらに対立構造が鮮明になる。

では、“心を通わせる会話”を目指すには、どんなことを心がければよいか。ここでは褒めること、肯定することから話に入ることを勧めたい。

前述の例でいえば、「前から欲しいと言っていたよね」と、夫が妻のスカート購入を認めることから始める。相手に軸足を置いて会話をスタートすることが大切だ。

このように、相手をまず肯定することは、ややもすれば自分の本音をひた隠しにすることのように感じられるかもしれない。お道では「うそとついしよこれきらい」(おふでさき十二号113)と教えられる。しかし、会話の際に、まず相手を肯定しようとするのは、自分の本音を隠すのではなく、相手をまず慮る気持ちを最優先することだと思う。

相手のことを思い、私利私欲を捨てていく。思いやりの気持ちを本音に切り替える努力をすることが、教祖がお喜びくださる「心の入れ替え」につながるのではないか。

思いが変われば、心が変わる。心が変われば、行動が変わる。行動が変われば、習慣が変わる。習慣が変われば、人格が変わる。人格が変われば、運命が変わっていく。すべては自分の思い、心づかいに端を発するだろう。

人生航路が明るく広がるか、暗く四面楚歌になるかの分岐点は、私たち一人ひとりの心の使い方による。

現在の社会情勢にあって、直接対面しての会話が難しいさなか、数少ない人との邂逅の場面で、心を通わせる会話を強く意識する。そう心がけることが、そよそよと吹く春風のような風通しの良い会話につながる。相手にとって心地よい風を呼ぶ声がけを今日から実践したい。(ひ)

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